【技術・製品情報】ショックアブソーバーとランヤード

鉄塔や建設現場など、おもに作業者が足場から踏み外すと墜落してしまう危険性のある場所で使用します。
一般的に「ランヤード」は短いロープ形状のものを指しますが、厚生労働省の「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」では以下のように解説されています。
『ランヤード:
フルハーネス又は胴ベルトと親綱その他の取付設備(墜落 制止用器具を安全に取り付けるための設備をいう。)等とを接続するための ロープ又はストラップ 以下「ランヤードのロープ等」という。 及びコネクタ等 からなる器具をいう。ショックアブソーバ又は巻取り器を接続する場合は、 当該ショックアブソーバ等を含む。』
つまり、「ランヤード」単体も、「ランヤード」に「コネクタ」や「ショックアブソーバー」まで含める場合も、ひとくくりに「ランヤード」としています。
オンラインショッピングやメールや電話でのやり取りなど互いが視覚的に情報確認できない状況では、認識の祖語が起こりやすいので注意が必要です。
なお当店では、
・「ランヤード」単体を指す場合…「ランヤード」
・「ランヤード」に「コネクタ」「ショックアブソーバー」まで含める場合…「ショックアブソーバー付きランヤード」または「1丁掛けランヤード」または「2丁掛けランヤード」
と区別して呼称します。
― ショックアブソーバー ―
ショックアブソーバー(エネルギーアブソーバー、フォールアブソーバー)は墜落時に衝撃を吸収するための装置で、内部には折り畳まれたウェビングが縫製されて収納されており、作業者が墜落すると縫製が裂けて衝撃を吸収しながら墜落を止めます。
またショックアブソーバーはランヤードやコネクタと組み合わせることで、支点(アンカー。フックをかける場所)から一定の距離を取って作業や移動をすることが出来ます。
【ショックアブソーバーの製品種類】
・ショックアブソーバー単体
…ランヤードやコネクタを別途用意する必要があります。
・ショックアブソーバー+ランヤードのセット(ショックアブソーバー付きランヤード)
…支点側とハーネス側のコネクタをそれぞれ別途用意する必要があります。
・ショックアブソーバー+ランヤード+支点側のコネクタがセットになったランヤード
…モデルによってはハーネス側のコネクタを別途用意する必要があります。
■国内のショックアブソーバーの規格
日本国内では「墜落制止用器具」の規格として、以下の2種が定められています。
第1種ショックアブソーバー
…自由落下距離1.8mで墜落した際の衝撃荷重値が4.0kN以下、ショックアブソーバーの伸び1.2m以下
第2種ショックアブソーバー
…自由落下距離4.0mで墜落した際の衝撃荷重値が6.0kN以下、ショックアブソーバーの伸び1.75m以下
第1種ショックアブソーバーは耐衝撃荷重が低いことから、墜落距離が短くなる【支点が腰の位置よりも高い場合】のみ使用可能です。
※弊店での取り扱いは一部製品のみ適合しています。
第2種ショックアブソーバーは支点の位置に限らず使用可能ですが、墜落時のショックアブソーバーの伸びが長いため高さによっては作業者が地面や障害物に接触してしまう危険があり、より正確なクリアランスの確認が必要となります。
元請け業者や公的機関より受注する際、「墜落制止用器具」の規格に適合したフルハーネスやショックアブソーバーの使用が求められます。そのため、受注を請け負う業者はかならず「墜落制止用器具」の規格に適合したフルハーネスやショックアブソーバーを用意しておく必要があります。
― ランヤード ―
ショックアブソーバーを1丁掛けランヤード/2丁掛けランヤードで使用する際に組み合わせます。1丁掛けランヤード/2丁掛けランヤードでは落下距離を抑えるためシステム全長を2m以下にする必要があり、ショックアブソーバーと組み合わせるランヤードは主に60~150cmの長さのものが販売されています。また、以下のように様々な種類のランヤードがあります。
【ランヤードの種類】
・長さ固定(フィックス)式
…セミスタティックロープ(ロープ作業で使用される伸び率が低いもの)またはダイナミックロープ(クライミングで使用される伸び率の高いもの)製の短いロープで出来ています。ダイナミックロープ製のランヤードは限定的ですが衝撃吸収性があります。
※ダイナミックロープは単体で特定の場所に留まって安全を確保しながら作業する(ビレイ)用途でも使用されます。
・伸縮式(アジャスタブル)
…通常時は短く縮んでおり、コネクターフックを持った手の動きに合わせて伸縮します。
・巻取り式
…主に国内メーカーから販売されています。
※当店取り扱いはありません。
【その他】
ランヤードはショックアブソーバーと組み合わせての墜落制止目的以外にも、様々な使い方があります。
・用途:行動制限(レストレイン)
…ハーネスと支点をランヤードで接続して作業者が移動できる距離を制限し、墜落の危険がある地点に到達できなくする目的で使用。
・用途:ワークポジショニング
…ハーネスの腹部アタッチメントまたはサイドアタッチメントポイントとランヤードを接続し、I字吊りまたはU字吊りで使用。
・種類:長さ調整可能型
…器具が付いたランヤードで、支点と作業者の距離を自由に調整できます。
など
■1丁掛けランヤード/2丁掛けランヤード
1丁掛けランヤード/2丁掛けランヤードともに、使用にあたっては以下のセットでシステム構築する必要があります。
「ハーネスと接続するコネクタ」
+
「ショックアブソーバー」
+
「ランヤード」
+
「支点と接続するコネクタ」
【1丁掛けランヤード(シングルランヤード)】
かけ替えの必要が無い現場で使用します。
【2丁掛けランヤード(ダブルランヤード)】
掛け替えをしながら移動する必要がある現場で使用します。
2丁掛けランヤードを使用し移動を行う際は、ランヤードのうち一方が必ずライフラインと接続している状態を維持しながら掛け替えを行ってください。
またランヤードを1本または2本ともに使用しない状況では、必ずハーネスの『コネクターフック専用ホルダー』に掛けておくようにしてください。
※コネクターフック専用ホルダーはメーカーを問わず簡単に破断する造りとなっています。これは、作業者が落下して万が一使用していない方のランヤードが障害物などに引っ掛かってしまった際にホルダーが破断することで、作業者が不安定な姿勢で宙づりにならないようにするためのものです。
※欧米メーカーのハーネスの場合、チェストハーネスの胸または肩部分にコネクターホルダーが付いています。日本メーカーの場合はウェストベルトについていることがあります。
※コネクター専用ホルダーが標準で付いていないハーネスもあります。コネクター専用ホルダーが無い場合は後付けできるのであれば後付けし、出来ない場合はコネクター専用ホルダーが付いている新しいハーネスをご用意いただく必要があります。
■ハーネスと接続するコネクター
強度が保証されているEN362の規格に適合した3ロック式のオーバル型もしくはD(変形D)型カラビナが望ましいです。
※ハーネスに接続し身体を保持するカラビナは、不意にゲートが開いてしまわない複雑なロック機構のものを選択してください。
■アンカー側と接続するコネクタ
現場のアンカーの状況に応じて最適なコネクターを選択する必要があります。
工事現場で使用される単管パイプは直径48.6mmが主流で、単管パイプに直接コネクタを掛けたい場合には60mm以上の開口幅を持つフック型コネクターを選ぶのが望ましいです。
鋼鉄製アンカーと直接接続する場合は、アルミ製カラビナよりもスチール製カラビナの方が信頼性が高いです。
■1丁掛けランヤード/2丁掛けランヤードを接続する場所
フルハーネスのアタッチメントポイントのうち、『胸部』または『背部』のアタッチメントポイントと接続して使用します。
それ以外の場所(腹部またはサイドアタッチメントポイント)には接続しないでください。腹部またはサイドに接続した状態で作業者が墜落すると、作業者が不安定な姿勢で宙づりとなりより苦痛を伴いやすいほか、腰がダメージを受けやすい、血流が悪くなりやすいなどのリスクがあります。