【技術・製品情報】[ツリーケア] 樹幹内作業におけるフルハーネスの必要性
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厚生労働省より「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」が施行され、高さ6.75m以上の作業には国内の墜落静止用器具の規格に適合したフルハーネス型安全帯の使用が原則となりました。
これにより、ツリークライミング(林業、造園業、その他ツリーケア全般)による作業時にもフルハーネスの着用が必須ということとなります。
また、ロープ作業においてはバックアップとしてモバイルフォールアレスターを使用したフォールアレストシステムが、足場作業においてはショックアブソーバー付きの1丁掛けもしくは2丁掛けランヤードとの併用が、墜落を安全に制止させるためには必要となります。
そして、モバイルフォールアレスターにしてもショックアブソーバー(付きランヤード)にしても、作業者と接続するにはチェストハーネスの胸部アタッチメントポイントもしくは背部アタッチメントポイントが必要で、必然的にフルハーネスを着用することとなります。
しかしながら、このようなフォールアレストシステムが、果たしてツリーケア、特に、樹冠内で行う作業において必要なのでしょうか。
というのも、「墜落制止」とは、『作業者が墜落した際に作業者が大怪我を負わないよう衝撃を和らげ安全に墜落を止める』ことを目的としています。
つまり、【作業者が大怪我をするほどの強い衝撃が加わるような墜落が発生する状況を念頭に置いたガイドライン】ということになります。
窓ガラス清掃などのロープ作業であれば、強度がしっかりしたアンカー(支点)が屋上にあることが多いですし、工場の巡回点検においても手すりなどの頑丈な金属物質が支点として利用できます。
一方、造園業などで行う樹冠内作業においては、作業者の体重を預けるトップアンカー(支点)は木の股や枝で、強度の保証はありません。内部が腐っていたり、木そのものが細い場合もあるでしょう。
そのため、仮に作業システムとは別にフォールアレストシステムを構築したり、2丁掛けランヤードなどを使用して、いざ作業者が足を踏み外した際に大けがを負うほどの衝撃が加わるような墜落が発生した場合、強烈な衝撃によって支点が崩壊し、作業者がそのまま地面に墜落してしまう危険性が多少なりともあるということです。
このような状況を受け、「一般社団法人 日本造園組合連合会」では、「樹木作業に係る造園用ワークポジショニングガイドライン」を公表し、樹冠内作業においては『自由落下距離を限りなくゼロにする作業システム』が有効であるとし、アンカーポイントに衝撃荷重が加わるシステムは『原則として選択しない』としています。
分かりやすく言えば、ロープシステムやワークポジショニングランヤードを用いるが、常にロープやランヤードに作業者の荷重が掛かっている状態を維持し、万一作業者が足を踏み外した場合も膝の曲がりぶん程度しか落下せず、その後は支点に向かって振り子のように作業者が降られるような作業システムで行う、ということになります。
確かに、自由落下距離を限りなくゼロに近くなれば、作業者が足を踏み外した場合も作業者にかかる衝撃も支点にかかる衝撃も最小限にできます。
そして、ロープは腹部アタッチメントポイント、ワークポジショニングランヤードはサイドアタッチメントもしくはフットループ状のアタッチメントポイントと接続するので、必ずしもチェストハーネスを組み合わせたフルハーネスである必要はありません。シットハーネスのみでも十分ということになります。
造園や林業などの協会はたくさんあるため、すべてが日本造園組合連合会の考えに賛同しているかは不明です。
しかしながら、自然物である木の股を支点とすることは安全性が絶対とは言い切れませんので、なるべく支点にかかる衝撃を少なくできるのであればその方法を選択することは間違いではありません。
※実際問題、フォールアレスト用のバックアップロープやショックアブソーバー付きランヤードを併用して作業されている方は稀でしょう。
樹冠内作業においてフルハーネスを着用するかしないかは、作業者が採用するシステムによります。そして上記の通り、必ずしもフルハーネス及びフォールアレストシステムを採用しない『自由落下距離を限りなくゼロにする』作業システムという考え方もありますので、今後の樹冠内作業のやり方について検討していただければと思います。