【技術・道具の基礎】フルハーネスの大まかな分類と選び方

「フルハーネス(正式にはフルボディハーネス)」と一言でいっても、用途・メーカーごとに様々なモデルがあり、高所作業の知識に乏しい方には違いや用途が分りにくい印象を持たれるかと思います。
本ページではフルハーネスの大まかな分類と、作業ごとの推奨ハーネスを解説します。
フルハーネスの分類
■フォールアレスト用フルハーネス
作業者の墜落を制止させる目的のみのハーネスです。
胸部と背部に墜落制止用のアタッチメントポイントがあります。
■ワークポジショニング用フルハーネス
墜落制止に加え、U字吊りなどのロープやランヤードに体重を預けて作業姿勢をとる目的に対応したハーネスです。
胸部と背部の墜落制止用アタッチメントポイント、そして腹部と腰の左右にワークポジショニング用のアタッチメントポイントを備えています。
「墜落制止(フォールアレスト)」と「ワークポジショニング」両方に対応するため、当店では「フォールアレスト・ワークポジショニング兼用ハーネス」と呼称しています。
ビル窓清掃などロープによる宙づり作業もワークポジショニングハーネスを用います。
※ロープの大きな登り返しが必要な作業ではチェストアッセンダーが有効です。
※当店ではチェストアッセンダー付きのワークポジショニング用フルハーネスは「ロープアクセス用ハーネス」として扱っております。
ロープアクセス用ハーネス(チェストアッセンダー付きワークポジショニングハーネス)の「カンプ GTターボ」
フォールアレストハーネス | ワークポジショニングハーネス | |
主目的 | 墜落制止 | 作業姿勢の保持(手を自由にして安定した姿勢で作業) |
重量 | 軽い | 重い |
アタッチメントポイント | 胸部(墜落制止用) | 胸部(墜落制止用) |
接続するランヤード | ショックアブソーバー付きランヤード(墜落制止) | ショックアブソーバー付きランヤード(墜落制止) ワークポジショニングランヤード |
特徴 | 墜落制止用に特化 | 墜落制止に加え、U字吊りなどの作業姿勢にも対応 |
価格 | 安価 | 高価 |
作業ごとの推奨ハーネス
■足場のしっかりした場所
例:建設現場、足場組み立て、造船業での外販溶接(足場作業)、高所作業車のゴンドラ内での作業 など
→フォールアレストハーネス
安定した足場のある場所で、墜落リスクのみ配慮する必要がある作業では、フォールアレストハーネスで対応可能です。なお、U字吊りなどの作業姿勢を取りたい場合は、ワークポジショニングハーネスを使用してください。
■U字吊り作業
例:電柱作業、鉄塔作業 など
→ワークポジショニングハーネス
不安定な足場に立ち、支柱にランヤードを巻き付けてU字吊りの姿勢で作業をするため、ワークポジショニングハーネスを使用します。
■1本吊り作業
例:のり面作業、屋根上作業
→ワークポジショニングハーネス
ロープやランヤードを腹部アタッチメントポイントと接続し1本吊りの姿勢で作業をします(日本メーカーのロリップを使用する場合はサイドアタッチメントポイントと接続します)。そのため、ウェストにアタッチメントポイントを完備しているワークポジショニングハーネスが必要です。
※屋根上作業で1本吊り作業をしない(墜落リスクのみの対処で良い)場合は、フォールアレストハーネスでも問題ありません。
■ロープによる宙づり作業
例:ビル窓清掃、ダム点検、風力発電のブレード補修 など
→ワークポジショニングハーネス
下降(上から下へのロープ移動)が中心で、登高は短い登り返しのみであれば、下降器とハンドアッセンダーでも対応可能ですが、3m、5mといった大きな登り返しが必要な場合はチェストアッセンダー付きのロープアクセス用ハーネス、もしくはチェストアッセンダーを後付け可能なワークポジショニングハーネスを利用します。