【技術・道具の基礎】強度

 【技術・道具の基礎】強度

商品のスペックには、強度や荷重などが記載されています。

それらの数値は、作業を安全に行ううえで意識しなければならない重要な要素です。

 

 


 ― 破断強度 ―

 

カラビナやロープなど多くの高所作業用品で見られる表記です。

破断強度は MBS (Minimum Breaking Strength)の略称で表記されることがあります。

「Minimum」が入っている通り、製品(ロープ、カラビナ、スリングなど)が破断する前に耐えられる"最小"の荷重です。

単位は kN(キロニュートン) や kgf(キログラム重)。

実験によって測定される値で、「壊れる直前の限界値」を示します。

英語で “Minimum Breaking Strength” =「最小破断強度」と呼ばれます。

 

 


― 運用荷重 ―

 

プーリーやスイベルで見られる表記です。

運用強度は WLL (Working Load Limit)の略称で表記されることがあります。

安全に繰り返し使用できる最大の実用荷重を表します。

WLL は MBS に対して 安全率 を掛けて設定されます。

WLL は「余裕を持たせた安全上の使用限界」と覚えるのが良いでしょう。

計算式の一例:

WLL = MBS ÷ 安全率

 

なお、荷重が大きいほど器具にストレスがかかるため、運用荷重に近い荷重で運用し続けると製品寿命が短くなります。

 

 


 ― 「ニュートン (N)」について ―

 

「ニュートン」は力の大きさを表す国際単位系(SI)の単位で、1 kN は 約 102 kgf になります。

商品を選ぶときはわかりやすいよう端数を切り捨て 1 kN = 100 kgf で考えるのが一般的です。

 

例 : MBS が 30 kN のカラビナ

→ 約3,000 kgf(3トン)で破断

 

 


― 使用可能重量 ―

 

ハーネスやショックアブソーバーに見られる表記です。

器具を使用する場合、衣服や装備を含めた作業者の重量は、その表記内に収まっていなければなりません。

なお通常、表記は「最大重量」のみが表記されていますが、一部のメーカーでは「最小重量」も表記しています。

 

■最大重量を超えた場合

(1)ショックアブソーバー

ショックアブソーバーの衝撃吸収性能では作業者の墜落荷重を軽減しきれず、 6 kN 以上の衝撃が発生する可能性があります。

また、墜落距離がわずかに長くなる場合があります。

 

(2)ハーネス

落下時、太もも・肩・胸のベルトに瞬間的に何百 kg fもの力がかかります。

重量超過だと大きな墜落が発生しハーネスがその衝撃を受け止めた際に金具や縫い目(ステッチ)の破断強度を超える恐れがあります。

※衝撃を受けた後にベルトが過度に伸びる・変形することもありますので、墜落後の再使用は危険です

 

■最小重量を下回った場合

ショックアブソーバーには「最小重量」が表記されている場合があります。

作業者と装備の合計がこの「最小重量」を下回っている場合、墜落時にショックアブソーバーの縫製がうまく解けず衝撃吸収が正常に機能しない可能性があります。

※ショックアブソーバーが正常に機能しないと、作業者に墜落時の衝撃がほとんどそのまま伝わり危険です。女性など体重が軽い方が最小重量の記載があるショックアブソーバーを使う場合は、装備重量で調整してください。もしくは、「最小重量」の記載がないあるいは「最小重量」が低く設定されているショックアブソーバーをご利用ください。