【技術・道具の基礎】欧州製プロフェッショナル用ヘルメット

【技術・道具の基礎】欧州製プロフェッショナル用ヘルメット

 

 


 ― 欧州のヘルメットの規格 ―

 

ヘルメットはさまざまな用途向けのものが製造されていますが、欧州ではそれぞれの用途別に細かく規格が分かれています。

  • EN397 - 産業用ヘルメット
  • EN443 - 消防ヘルメット
  • EN812 - 軽作業帽
  • EN966 - エアスポーツ(ハンググライダー、パラグライダー)用ヘルメット
  • EN1077 - スキーおよびスノーボード用ヘルメット
  • EN1078 - 自転車用・スケートボード用・ローラースケート用ヘルメット
  • EN1080 - 幼児用ヘルメット
  • EN1384 - 乗馬用ヘルメット
  • EN1385 - ウォータースポーツ用ヘルメットEN12492 - 登山用ヘルメット
  • EN12492 - マウンテニアリング(山岳)用ヘルメット
  • EN14052 - 高性能産業用安全ヘルメット
  • EN50365 - 絶縁性ヘルメット(電気作業用)

※日本でもSG規格により用途別のヘルメットに規格が設けられています。

このうち当店取り扱いの欧州のプロフェッショナル製品メーカーでは、EN397(産業用)、EN12492(マウンテニアリング用)、EN50365(絶縁性)に適合しているヘルメットを製造しています。

EN12492(マウンテニアリング用)規格に適合しているヘルメットをメーカーがプロフェッショナル用としてラインナップしているのは、EN397(産業用)のあご紐の破断荷重が「15kg以上25kg以下」と外れやすい仕様であるためです。

稼働中の機械にヘルメットのあご紐が巻き込まれたり、障害物に引っかかると首吊り状態になってしまため、産業用ヘルメット(EN397)は弱い力でもあご紐が簡単に破断する設計になっています。

産業用ヘルメットの規格は、高所作業向けというよりも工場や建設現場など主に地上で作業する人の使用を想定したものになります。

一方、マウンテニアリング用ヘルメットは上部からの落石や、滑落、クライミングでの墜落などから頭部を保護するのが目的ですが、障害物などに引っかかって簡単に顎ひもが外れヘルメットが脱落してしまうと危険なため、破断強度が「50kg以上」と強められています。

高所作業はマウンテニアリングとリスクが近いため、EN12492(マウンテニアリング用)規格に適合しているヘルメットが適しています。

 

なお、地上作業においても、例えば震災などで半壊した建物内に入る必要がある場合は、障害物にヘルメットをぶつけて顎ひもが簡単に外れてしまうと危険なためEN12492(マウンテニアリング用)規格に適合しているヘルメットが向いていると考えられますし、逆に高所作業において、屋内で上部からの落下物がなく足場もしっかりしているものの施設内に機械が多く稼働しておりヘルメットの顎ひもが引っかかって機械に巻き込まれるリスクがある場合は、簡単に顎ひもが外れるEN397(産業用)のヘルメットが適していると考えられます。

 

 


 ― 日本国内の産業用ヘルメットの規格 

 

日本では、厚生労働省が定める労働安全衛生法の規定に基づき「保護帽の規格」が設けられています。

  • 飛来・落下物用…上空からの飛来物や落下物から頭部を保護する。
  • 墜落時保護用…作業者が墜落した際に頭部を保護する。
  • 絶縁用保護具…高圧電流から頭部を保護する。

 

 


 ― 国内の保護帽の規格を満たしていない欧州製のヘルメットについて ―

 

EN397(産業用)、EN12492(山岳用)の規格に適合しているプロフェッショナル用ヘルメットであれば、日本の規格と同等の検査を行っているため安全性は高いです。
特にEN397(産業用)は欧州における産業用ヘルメットの規格であり、日本国内の保護帽の規格と同程度の試験に加え、

  • 側面への荷重に対する耐性
  • 非常に低い温度での前処理
  • 非常に高い温度での前処理
  • 5 秒内に炎が消える
  • 溶解金属の飛散からの保護

といった日本のヘルメットの規格にはないテストも併せて行っています。
そのため、安全性についてはかなり高いヘルメットといえます。

 

 


 ― 欧州製ヘルメットの選びかた ―

 

欧州製ヘルメットを選ぶ際にあたり、大きな判断基準となるのは「通気孔の有無」「内部構造」「あご紐強度」になるかと思います。

 

■通気口の有無

通気口がある方がヘルメット内部に空気が通りやすくなり、暑い時期に快適です。

逆に、寒さの厳しい時期・地域では頭が寒くなります。

また通気口があると雨がヘルメット内に入りやすくなったり、化学薬品など人体との接触を避けたい液体がヘルメット内部に侵入するリスクがあります。

※通気口が開閉式のモデルもあります。

通気孔の無いヘルメットは電気絶縁性に対応するモデルもあるなど、より安全性の高い構造となります。

 


■内部構造

大きくは「ハンモックタイプ」と「発泡樹脂タイプ」とに分かれます。
ハンモックタイプは重量物が当たった際に内部のハンモックが伸びて衝撃を吸収します。また頭皮と接する部分が小さくなるため、内部が蒸れにくく頭皮の熱が逃げやすいのも特徴です。
なお国内の保護帽の規格のうち「墜落時保護」は衝撃吸収ライナーを有することが求められており、衝撃吸収ライナーが使用されていないタイプのハンモックヘルメットは構造上「墜落時保護」に適合できません。
※ただし一部の国内メーカーではハンモックタイプのヘルメットの帽体(シェル)内側に衝撃吸収ライナーを貼り、「墜落時保護」にも適合させているモデルもあります。

「発泡樹脂タイプ」はバイクのヘルメットなどと同じ構造で、厚い衝撃吸収素材が頭部全体を保護します。

 


■あご紐強度

海外メーカーのプロフェッショナル用ヘルメットはEN397(産業用ヘルメット)またはEN12492(山岳用ヘルメット)のいずれかを満たしています。

EN397に適合するヘルメットはあご紐の強度が250N(≒25㎏)以下の力で破断し、EN12492に適合するヘルメットは500N(≒50㎏)の荷重でも耐える強度を有します。

 

 

 

ヘルメットが簡単に外れる方が良いか、それとも外れない方が良いかは、想定されるリスクにおいて判断ください。