【技術・製品情報】コネクター

高所作業で使用するカラビナにはいろいろな種類がありますが、ここでは代表的なものを紹介します。
― 形 状 ―
■オーバル型
もっともポピュラーな形状のカラビナです。汎用性が高く、様々な用途に使用できます。
モバイルフォールアレスターやプーリーなど、接続部の幅が広くD型カラビナだと収まりが悪い道具との接続に特に有効です。
■D型/変形D型
アルファベットの「D」の形状をしたカラビナです。最初期は上下の形状が対照的なD型が主流でしたが、現在では非対称な変形D型が多くなっています。
ロープやスリングが内側の鋭角な部分に留まりやすいので、下降器など荷重を1点に集中させたい器具との接続に有効です。
■HMS型(洋ナシ型)
洋ナシのような形をしたカラビナです。
下方向が広めな設計になっており、アンカーなどに接続して複数の器具やカラビナを取り付けるのに向いています。
■半円型
文字通り半円の形をしたカラビナです。
2方向や3方向から荷重がかかるシーンで使用でき、主にフォールアレストハーネスの胸部アタッチメントポイントやアンカー用途として利用されます。
■フック型
通常のコネクターと異なり開口時にかぎ爪のような形状となるコネクターです。ショックアブソーバー付きランヤードやビレイランヤード、ワークポジショニングランヤードとの相性が良いです。
― ゲートタイプ ―
■スナップゲート
指でゲートを押し込むだけで開閉する、シンプルなゲート構造のカラビナです。
形状としては、まっすぐなストレートゲート、屈曲したベントゲートとワイヤーゲートの3種類があります。
欧州の産業用コネクタの規格EN362はロッキング機構が必須条件のため、ノンロッキングタイプのカラビナはEN362に適合しません。
ゲートがロックできないため、手や身体で不意にゲートを触って開けてしまったり、ウィップラップ現象(カラビナとロープの摩擦などによる震動によりカラビナのゲートが瞬間的に開いてしまう現象)が起こるリスクがあります(ワイヤーゲートは起きにくいです。が、可能性がゼロではありません)。
ノンロッキングは主にクライミングで使われるカラビナですが、高所作業でもブランコ(ベンチシート)などの道具をハーネスと接続する際に使用されます。
■スクリューゲート(2アクションロック)
ゲートにスクリュー式のロッキング機構が付いたカラビナです。
親指の操作だけでゲートのロック/解除が可能で、またロッキングカラビナの中では安価なため様々な用途に利用されます。
尚、スクリューゲートは自動的にロックしないため、確実なロックが必要な状況でははゲートの締め忘れに注意してください。
■ツイストロック(2アクションロック)
(1)ゲートをひねる
(2)ゲートを内側に倒す
という2つのアクションによりゲートが開閉するオートロッキングカラビナです。
片手で簡単に操作できるうえ自動でゲートを閉じる際はロックがされるため、ランヤードなど頻繁に付け外しを行う道具に多く使用されます。
ツイストロックはオートロック式のため容易にはゲートが開きそうにない感じを受けますが、障害物や身体にカラビナが押し付けられた状態で擦るような動きが発生するとゲートが開いてしまうことがあるので注意が必要です。
■スライダーロック(2アクションロック)
ゲートに付いたスライドボタンを動かしてロックを解除しゲートを開閉させるオートロッキングカラビナです。
親指の操作だけでスライドボタンを操作できるため、ツイストロックタイプよりも扱いは容易です。
半面、スライドボタンが誤操作されると簡単にゲートが空いてしまうため、障害物とカラビナが頻繁に接触するようなシーンではリスクが高く、そのようなシーンでの使用はあまりお勧めはできません。
■トリプルロック(3アクションロック)
(1)ゲートを上にあげる
(2)ゲートをひねる
(3)ゲートを内側に倒す
という3つのアクションによりゲートが開閉するオートロッキングカラビナです。
片手での操作は慣れても難しく、もう片方の手を添えないとスムースに開閉しにくいですが、開閉に必要な動作が複雑なため、下降器やモバイルフォールアレスター、ワークポジショニングランヤードなどユーザーと直接接続する道具で、且つ容易に外れては困るものに使用します。
■4ロック
現時点でDMM社のみが独自に開発・採用している4アクションロック機構です。ロッキングゲートが2重になったような構造をしています。
(1)外側のゲートをひねって内側のゲートと位置をあわせる
(2)ゲートを上にあげる
(3)ゲートを内側に倒す
と、3つの動作でゲートが開きます。
アンカーなどで利用されることを想定しています。
■パームスクイーズ
フック型コネクターに採用される1アクションロック機構です。コネクターを握りこむことでゲートが開きます。
― 規格について ―
当店で取り扱っている製品は欧米メーカーがほとんどで、欧州の産業用カラビナの規格EN362に通っているものが多いです。
ノンロッキングタイプは上記の通りEN362には適合しません。
また欧州のEN規格に加え北米の規格「ANSI」に適合しているカラビナもあります。ANSI規格適合品は横方向の強度が16kN以上あり、ゲート部分がより強化されています。なお、高い強度を達成するためゲートは大きく頑丈に作られており、そのぶんゲート開口幅は狭くなります。