【技術・製品情報】[ツリーケア]SRT/SRSとDdRT/MRS

【技術・製品情報】[ツリーケア]SRT/SRSとDdRT/MRS

 

ツリーケア(造園、林業など)は窓ビル清掃などと異なり、作業者の開始地点が基本的に地上であるため、作業場所となる樹上へのアプローチの方法は、「はしごを使用する」、「ランヤードを使用する」、「ロープを使用する」、「高所作業車を使う」など幾つもあるのが現状です。

そのうち、樹冠へのアプローチとしてのロープ技術によるツリークライミングは、シングル登降(SRS/SRT)もしくはダブル登降(MRS/DdRT)が用いられます。

 

 


 ― 地上アンカーでのロープ技術 ―

 

SRT(Single Rope Technic)またはSRS(Stationary Rope System)と呼称されます。ロープを地上のアンカー(支点)に接続し、【ロープが支点で固定され動かない状態】で登降する技術です。

もともとSRTと呼ばれていましたが、ロープが動かないという実態から「Stationary(「制止した」の意) Rope System」と呼ばれるようになりました。ただ、ペツル社のツリーケア用シットハーネス「セコイアSRT」のように、SRTの呼称も依然として使用されています。

作業者は樹冠内の枝に掛けて垂れ下がっている二股のロープのうち、地上アンカーと固定していないほうのロープにハーネスを接続して登ります。

SRT/SRSはロープ登高の効率が良く、また樹上ではリダイレクト(トップアンカーとは別に新たな支点を樹上に構築し方向転換する技術)がしやすいため、樹幹内の一部の枝を落とす作業(枝打ち)などに向きます。

なお、SRT/SRSの場合、「①自身がぶら下がっている方のロープ」と「②地上アンカーと固定している方のロープ」それぞれに作業者の重量と同じだけの荷重がかかります。そのため、例えば作業者の作業重量が60kgの場合、樹上のアンカーには常時①60+②60=120kg(+ロープなど諸々)の荷重がかかることになります。

SRT/SRSは作業者が墜落した際に、樹上でロープを掛けている木の股にかかる衝撃が以下に紹介するDdRT/MRSと比較して2倍になります。ツリーケアにおいては樹上のアンカーポイント(として利用している木の股)の強度保証はありません。そのため、安全面を考慮しSRT/SRSを利用しない方もいます。

 

 


 ― 樹上アンカーでのロープ技術 ―

 

DdRT(Doubled Rope Technic)またはMRS(Moving Rope System) と呼称されます。

作業者は樹上のアンカーから垂れ下がっている二股のロープとハーネスを接続して登ります。この際、ロープは地上アンカーと接続しません。そのため、SRT/SRSと異なり、【作業者の登高/下降に併せて樹上アンカーを支点にロープが動きます】。これが「MRS(Moving Rope System)」と呼ばれる所以です。

滑車の原理と同じで、樹上のアンカーを支点に片方のロープ(作業者の荷重を支えていない方のロープ)を引っ張って登るため、体を上げる力はおよそ半分で済みますが、登高効率はシングルと比較すると半分になります。

また、地上アンカー(支点)となる木の股にかかる荷重は作業者の体重(+ロープなど諸々の装備)で、SRT/SRSよりの半分で済むため、墜落をした際などに支点崩壊のリスクが低くなります。

 

 


 ― これから初める人はどちらが良いか ―

 

人によって意見は異なるとは思いますが、初めての方にはダブル(DdRT/MRS)を推奨します。シングル(SRT/SRS)よりも力を使わずに登れ、また姿勢も安定させやすいです。