【技術・道具の基礎】背中で吊られるか、胸で吊られるか(墜落制止)

作業者が墜落した際に安全に制止させる目的で用意されている、胸部または背部アタッチメントポイント。
作業者は墜落のリスクがある高所では、胸部と背部いずれかのアタッチメントポイントとアンカー(支点)をショックアブソーバー付きランヤード(1丁掛け/2丁掛けランヤード)で接続します。
ショックアブソーバー付きランヤードを取り付けた場合
■背部アタッチメントポイント
2丁掛けランヤードを使用していない時は、ランヤードが背部から両脇の下を通り肩部のコネクターラック(パーキングループ)と接続されます。
また現場で2丁掛けランヤードを使用する際は、アンカーと接続するランヤードは作業者の後ろにある、もしくは作業者の肩の上を通るような「運用をすることが多く、体の前面で行う作業中にランヤードが邪魔になりにくいです。
■胸部アタッチメントポイント
2丁掛けランヤードを使用していない時は、胸部から下がったランヤードが 「W」のような形で肩部のコネクターラック(パーキングループ)と接続されます。
アタッチメントポイント、ランヤード、コネクターなどシステムがすべて前面にあるため、鉄塔やハシゴ登高など移動の多い作業で特に有効です。
なお、アンカーと接続するランヤードは作業者の前にある、もしくは作業者の目の前を通ることになるため、作業の内容によっては体の前面で行う作業中にランヤードが邪魔に感じることがあるかもしれません。
墜落時の身体へのダメージ
■背部で吊られた場合
荷重は【レッグループ(太もも裏から足の付け根)】に集中します。これにより大腿部の動脈が圧迫され、長時間吊るされた場合血流に障害が出やすくなります。

血流障害を防ぐためには、「シンギングロック サスペンショントラウマセーフティ」や「カンプ ヘルプステップ」のような墜落時用の特別なフットループが有効です。
墜落時に足をアブミに乗せることで、大腿部の血流を改善します。
■胸部で吊られた場合
荷重は背中から太もも裏にかけて広く分散します。主に荷重が掛かるのは太もも裏ですが、胸部アタッチメントポイントで吊るされるよりも動脈の圧迫は少なく、作業者の体への負担は小さくなります。
なお、市販のフルハーネスの多くはアタッチメントポイントが胸部・背部両方ありますが、なかにはいずれか一方しか付いていないモデルもあります。
いずれか一方の場合、国内メーカーのフルハーネスは背部アタッチメントポイントが、海外メーカーの場合は胸部アタッチメントポイントが付いている傾向にあります。
上記を踏まえると、日本メーカーのハーネスは作業のしやすさ重視、海外メーカーは墜落時のダメージ軽減を重視しているとも言えます。