【基本装備(欧州)】閉鎖空間(マンホール、洞窟、道路陥没救助など)

【基本装備(欧州)】閉鎖空間(マンホール、洞窟、道路陥没救助など)

 

洞窟やマンホールなどの閉鎖空間での作業は、空間の狭さを原因とする移動・作業の制約、人体に有害な空気環境や液体の存在などにより、作業運用上の困難と安全に関する課題が常に伴います。

2025年8月、水道管点検を行う会社の作業員1名が硫化水素中毒によりマンホール内に落下した後、救助をしようとした作業員3名もマンホール内に転落し、あわせて4人が無くなるという痛ましい事項が起きましたが、警察の調べでその4名とも落下防止のための保護具(=フルハーネス)を身に着けていなかったことが判明しました。

フルハーネスは、ショックアブソーバーなどの墜落制止用器具と組み合わせることで、高所において万が一墜落した際に作業者を安全に止めることができますが、地下閉鎖空間などにおいても、ハーネス装着者とロープが接続されていれば、墜落した作業者より上にいる別の作業者がロープを引き上げることにより救助活動を行えます。

そもそも、酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)において、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合、労働者が酸素欠乏症等にかかって転落するおそれがあるときは「墜落制止用器具」を使用させることが定められています。

内部の空気環境の安全性が担保されていないマンホールや洞窟などの閉所作業においては、フルハーネスの着用はほぼ必須といっても過言ではないでしょう。

 

本ページでは、閉鎖空間での欧州の基本装備を紹介します。

※作業によっては更に追加で装備が必要となります。飽くまで基本装備の紹介となりますことご了承ください。未経験者の方は社内の経験者や高所作業訓練講座を開催している企業や団体のもとでトレーニングを行い、高所作業技術と道具に対する知見を獲得してください。

 

 


基本装備

 

■酸素・ガス検知器

※当店取扱無し

酸素濃度、可燃性ガス、一酸化炭素、硫化水素などの危険ガスを測定し、閉鎖空間への侵入の可否を判断します。

 

■換気装置(送風機・排気ファン)

※当店取扱無し

閉鎖空間内に新鮮な空気を送り込み、有毒ガスや酸欠状態を改善します。ダクトホース付きで内深部まで送風可能なタイプが望ましいです。

 

■送気マスク

※当店取扱無し

コンプレッサなどからホースを通して空気を長時間送り続け、作業者自身の肺の力で呼吸をするタイプのマスク。

有毒なガスが発生するリスクが高い場所での作業時に極めて有効な装備です。

 

■ヘルメット

飛来物や墜落時に作業者の頭部を保護します。

欧州のプロフェッショナル用ヘルメットは基本的にEN397(産業用ヘルメット)とEN12492(マウンテニアリング用ヘルメット)の2種類のうちいずれかの認証を取得しています。

EN397(産業用ヘルメット)とEN1492(マウンテニアリング用ヘルメット)の一番の違いは顎ひも強度で、EN397のヘルメットは顎ひもが障害物に引っかかった際の首吊りを防ぐため15~25kgの力で顎ひもが外れるのに対し、EN12492は簡単に顎ひもが外れてしまわないよう50kg以上の力が必要です。

墜落の危険性を伴うハシゴ登高を想定した場合、EN12492認証のヘルメットが推奨となります。

また、通気口の空いていないモデルであれば、液体から頭部を保護できます。

 

■ハーネス

墜落時に作業者の身体を保持する個人保護用具です。

U字吊りなどでの作業を行わないのであれば、胸部または背部にアタッチメントポイントのある「フォールアレスト用ハーネス」が安価でおススメです。

 

なお、ロープアクセス技術を用いて救助者がロープで下降し要救助者のレスキュー活動を行う場合は、腹部にアタッチメントポイントがあるワークポジショニングハーネスが必要になります。

 

■携帯照明(ヘッドランプなど)

照明のない場所、光の届かない場所で利用します。

なお、可燃性ガスが存在する可能性がある場所では、防爆構造のLEDライトやヘッドランプが必須です。

 

 


救助活動用装備

 

■トライポッド(三脚)

マンホールなど救助者が降下する地点に設置し、仮設アンカーとして利用します。

安全のためレスキュー時のみならず点検作業時にも三脚を設置し作業者をロープと接続してから閉鎖空間に侵入することもあります。

なお、降下地点付近が陥没する危険性がある場合は三脚は使用せずチロリアンブリッジなど別の方法で支点を構築し救助活動を行います。

 

■ウィンチ

垂直出入口(マンホールなど)からの安全な昇降・救出に使用します。救助者や要救助者を引き上げるための必須装備です。

 

■リギングプレート

三脚に取り付け、複数の器具を接続できるようにします。

またレスキュー用ストレッチャーを使用する場合に各ストラップを一つにまとめるために使用することもあります。

 

■プーリー

作業者の重量の負担を少なくスムーズに引き上げるために使用します。

プーリーを追加して倍力システムを構築すれば、より軽い力で引き上げることができます。

※倍力が大きくなるほどロープの引き上げる距離は長くなります

 

■ロープ

要救助者の引き上げに利用します。

またロープアクセス技術を用いた救助をする場合メインロープ(親綱)やバックアップロープ(ライフライン)用途で使用します。

欧州の装備ではφ10.5mmからφ11mmのロープが主流で、下降器やモバイルフォールアレスターなども主流のロープ径に合わせて設計されています。

ロープのメーカー規格品は通常50m、100mとキリの良い長さで販売されていますが、「カンプ イリジウム 10.5mm」「カンプ イリジウム 11mm」は仕入先にてご希望の長さに裁断可能です(切り売り、10m単位)。

 

■ショックアブソーバー

ロープとハーネスの間に接続し、下降中または救助時の引き上げ中に墜落した際の衝撃を吸収します。

 

ディッセンダー下降器

トライポッドに取り付けて作業者の下降に用いたり、救助者がロープアクセス技術で要救助者の元にアプローチ(下降)する際などに利用します。 

 

■レスキュー用ストレッチャー

動けない要救助者をハーネスで吊るのではなくレスキュー用の担架(ストレッチャー)に乗せて救助する場合に利用します。

 

■レスキューハーネス

要救助者がハーネスを着用していない、または着用していたハーネスが破損し使用できない場合に利用します。トライアングルハーネスは垂直状態での登下降のみ使用できます。