【技術・道具の基礎】ショックアブソーバーのねじれ【モバイルフォールアレスター】
「ペツル アサップロック」や「エーデルリッド ヒューズ」をお使いの方であれば、接続しているショックアブソーバー(特に付け根)が一度くらい捻じれてしまうのを経験したことがあるかもしれません。
この「ショックアブソーバーのねじれ」は、ショックアブソーバーにとってあまり好ましいことではありません。
![]()
■性能低下のリスク
ショックアブソーバーが強く捻じれた状態で墜落が発生すると、本来の設計通りに伸びにくくなる可能性があります。
また、内部の縫製がきれいに均等に引き裂かれず、衝撃性能が低下する可能性もあります。
■落下距離増加のリスク
モバイルフォールアレスターは、2m/sなど急な落下が発生した場合にロック機構が作動する仕組みですが、ショックアブソーバーのねじれが発生していると ロープ上の滑走が鈍り、そのぶん墜落距離が伸びてしまう可能性があります。
■製品寿命の低下
長期間に渡りねじれた状態が続くと繊維に負荷がかかり、ショックアブソーバーの交換サイクルが早まります。
対 策
作業用ロープに取りつく際に、バックアップロープ(ライフライン)と接続しているモバイルフォールアレスターのショックアブソーバーがねじれていないかきちんと確認することが最も重要です。
なお、確認してロープに取りついても、様々な要因でショックアブソーバーがねじれることはありますので、ねじれを防ぐためにスイベルと組み合わせるのも一つの手段です。
![]()
■使用するスイベル
一般的なスイベルを使用すると、
モバイルフォールアレスター ↔ ショックアブソーバー ↔ スイベル ↔ カラビナ ↔ ハーネス
と、スイベルの分だけシステムが若干長くなります。
それでもクリアランス(作業者が墜落した場合の地上からの猶予)がきちんととれていれば落下時に大きな問題にはなりませんが、システム全長をコンパクト且つシンプルな構成にしたい場合は、ゲート開閉が可能なスイベルを使用するのが良いでしょう。
エーデルリッド社の「キューピッドスイベル (#84015 )」は、両側にゲートを備え、ショックアブソーバー、ハーネスに直接接続ができます。
カンプ社の「エニグマ (5325900)」は、開閉可能なゲートに加えシャックル機構も備わっているため、作業者の動きに柔軟に追従し、ねじれの発生を極限まで抑えます。
なお「エニグマ」は一度パーツに分解してから接続したい器具をアイレットに通したうえで一緒に組み立てるのですが、この組み立てが知恵の輪のように難しくなっています。
「エニグマ」は英語で「なぞなぞ」や「パズル」を意味しますが、慣れないうちは組み立てに難儀します。
ただ、この複雑な組み立て方もあり、使用中にバラバラになりにくくもあります。
ゲート開閉機構とシャックル機構の両方を備えたスイベルとしては、DMM社の「ネクサス 3 (SW490)」もございます。
こちらは分解・組み立てがシンプルで、且つシャックル部分を別売り品と交換可能です。
まとめ
ショックアブソーバーの捻じれは、作業に当たって良い影響がありません。
スイベルの導入について是非検討を頂ければ幸いです。