【技術・製品情報】新品のロープを洗浄するかしないか

作業で使用するロープについて、使用前に「洗った方が良い」という意見と「洗わない」という意見があります。
― 洗浄するとどうなるか ―
現在市販されているセミスタティックロープは事前に洗浄しなくてもそのまま問題なく使用できます。
ですが、事前に洗浄することによって使用期間を通して性能がより均一になります。
■初回仕様時の下降時の摩擦力が増加
洗浄していない新品のロープには工場での製造過程で使用される油分が残っており、初回使用時は新品ロープでの下降がコントロールしにくくなっています。そしてロープが雨などの要因により濡れてしまった場合、特に初回時に油分が混じった水分がロープ表面に染み出し、下降のコントロールをより難しくします。
使用前にロープを洗浄することでこの油分を取り除くことができ、摩擦力が増加して洗浄しない場合よりもロープコントロールがしやすくなります。。
■経年によるロープの長さの変化が抑えられる
セミスタティックロープに用いられるナイロン素材の特性として、濡れた状態で伸び、乾く過程で縮みます(変形)。屋外での使用などで濡れを繰り返すと、ロープの長さは徐々に短くなります。そのため、長さを特定の用途に合わせてカットする場合、経年による変形で作業でのトラブルが生じる可能性があります。
ロープの収縮のほとんどは初回の濡れによって生じるため(3~4 日水に浸けると 7~8% 収縮)、事前に洗浄しあらかじめ収縮させておくことで、使用に伴う長さの変化を抑えられます。
※50m以上の長さをキープしたい場合は、60mロープを購入されることを推奨します。
― 洗浄する場合 ―
24時間水に浸けた後、手洗いまたは洗濯機で洗浄し、その後常温の水で良くすすいでください。
ロープの長さを特定の用途向けに合わせる場合は、上記に記載の通り数日間水に浸けておくと収縮が進みます。
― 洗浄した場合のデメリット ―
ロープ洗浄のメリットは上述の通りですが、一方でデメリットもあります。
■ロープの加工処理の劣化懸念
洗浄作業を行うことにより、ロープに施された加工 (ドライ加工、内芯・外被の接着処理等) の劣化が早まる可能性があります。
また、未洗浄のロープをほとんど濡らすことなく使用し続けた場合、柔軟性、伸縮性がより長期間にわたって保たれます。
以前、ある輸入代理店の担当者に確認した時は、「洗っても洗わなくてもどちらでも構わない」という回答でした。
ロープの事前洗浄にはメリット・デメリットがありますので、ご自身の判断で選択いただければと思います。
なお、ドライトリートメント加工が施されているロープは、その特性を長期間維持するため洗浄せずにご使用いただくことを推奨します。