【基本装備(欧州)】鉄塔作業

送電線塔や電波塔など鋼材で構成された鉄塔の保守点検作業では、かならずしも墜落制止装置が常設されているわけではなく、また作業者は地上から鉄塔上部まで人力で登っていく必要があります。
そして鉄塔上部では鉄骨を足場に点検補修作業を行い、時には頻繁に塔を上下しなければならないこともあります。
そのため、鉄塔の保守点検作業では、2丁掛けランヤードや1本吊り・U字吊り用のポジショニングランヤード、何度も鉄塔を上下したり当の外側を補修する場合はロープを用いたロープアクセスが有効となる場合もあり、状況に応じて装備を追加する必要があります。

本ページでは、鉄塔作業の欧州の基本装備を紹介します。
※作業によっては更に追加で装備が必要となります。飽くまで基本装備の紹介となりますことご了承ください。未経験者の方は社内の経験者や高所作業訓練講座を開催している企業や団体のもとでトレーニングを行い、高所作業技術と道具に対する知見を獲得してください。
基本装備
■ヘルメット
飛来物からの保護や墜落時に作業者の頭部を保護します。
欧州のプロフェッショナル用ヘルメットは基本的にEN397(産業用ヘルメット)とEN12492(マウンテニアリング用ヘルメット)の2種類のうちいずれかの認証を取得しています。
EN397(産業用ヘルメット)とEN1492(マウンテニアリング用ヘルメット)の一番の違いは顎ひも強度で、EN397のヘルメットは顎ひもが障害物に引っかかった際の首吊りを防ぐため15~25kgの力で顎ひもが外れるのに対し、EN12492は簡単に顎ひもが外れてしまわないよう50kg以上の力が必要です。
墜落の危険を伴う鉄塔作業は墜落時のリスクを重視し、簡単に顎ひもが外れないEN12492の認証を取得したヘルメットが推奨となります。
また絶縁性のあるヘルメットの方がより安全性が高まります。
■ハーネス
鉄塔作業ではU字吊り作業を伴うことが多いため、サイドアタッチメントポイントが付いたフルボディハーネス(フルハーネス)を推奨します。
また1丁掛けもしくは2丁掛けランヤード(ショックアブソーバー付きランヤード)もほぼ必須装備になりますので、肩部にコネクターを掛けておけるコネクターラック(パーキングループ)が付いているハーネス、もしくはホルダーを後付けできるハーネスを選ぶとよいでしょう。
「カンプ GT NEXUM」は肩部にコネクターラック、腰部にはサイドアタッチメントがあり標準的な鉄塔作業に対応するほか、胸部にチェストアッセンダーを取り付けることが可能でロープ作業の登り返しにも対応します。また「カンプ GT NEXUM」は国内の墜落制止用器具(フルハーネス)に適合しています。
■1丁掛け/2丁掛けランヤード
鉄塔の登降や鉄塔上部での作業時に墜落制止目的で使用します。ショックアブソーバー付きで、墜落を安全に制止させます。
1丁掛け/2丁掛けランヤードはハーネスの胸部または背部アタッチメントポイントに接続し、墜落時に頭部が胴体より下の状態(頭に血が上る状態)で宙づりにならないようにします。
1丁掛けでも用途としては足りますが、2丁掛けの方がより安全性が増します。
※日本では日本メーカーが販売している墜落防止器具の「ロリップ」や「ハイセフティ」を鉄塔登降時にバックアップとして用いられています。
■ワークポジショニングランヤード
1本吊りまたはU字吊りでの作業に使用します。
「カンプ ドゥルイドランヤード」のような、メカニカルデバイス付きで長さ調整が容易なワークポジショニングランヤードは作業が快適になります。
【ロープ作業を行う場合】
■ロープ
作業者がぶら下がるためのメインロープと、万が一作業者が墜落した場合に ライフライン(バックアップロープ)の2本を設定します。
欧州の鉄塔作業では、メインロープ、ライフラインともにEN1891Aの認証を取得したセミスタティックロープを用います。
■アンカー用スリング
ロープの支点(アンカー)を構築するために使用します。メインロープとライフラインはそれぞれ別の支点と接続し安全性を確保するため、アンカー用のスリング(及びカラビナ)は最低でも2つ必要です。
■モバイルフォールアレスター(墜落制止装置)
ライフラインに接続し、メインロープ上の作業者が万一墜落した際に安全に制止させます。
「ペツル アサップ」「アサップロック」(当店取扱無し)はジャミングローラー式で、必ずショックアブソーバーとの併用しなければなりません。
当店取扱の「カンプ ゴブリン」や「シンギングロック ロッカー」はカムロック式で、器具とロープを直接接続できます。
※ロープとの距離を離したい場合はランヤードやストラップを併用します。
■下降器(ディッセンダー)
ロープの下降、および宙吊り作業時に作業者を同じ位置に留めておくブレーキとして使用します。
クライミングなどのマウンテニアリングでも使用されるエイト環と、ロープを機械的に挟み込んで自動でブレーキを掛けるメカニカルデバイスがありますが、近年では作業の安全性を重視しメカニカルデバイスを用いるのが主流です。
メカニカルデバイスはブレーキングレバーを操作して下降の速度を調整します。
なお誤って強くレバーを操作し急降下してしまった際に、即座に自動でブレーキがかかるアンチパニック機構(パニック防止機構)を備えたモデルもあり、そちらの方がより安全に作業を行えます。
■ハンドアッセンダー
フットテープと組み合わせて、ロープを登り返す際に使用します。
短い登り返しであれば下降器とハンドアッセンダーでも対応できますが、登高効率が悪いため、3mを超えるような大きな登り返しが必要な場合はチェストアッセンダー付きフルハーネスを使用されることを推奨します。